アルコール中毒 診断「アルコール中毒=アル中」って聞くと一升瓶を抱えて酔っ払っていたり、酒乱で暴れていたり、とネガティブなイメージを持つ人は多いと思います。そこでアルコール中毒にならないための診断方法など詳しく解説します






あなたは大丈夫!?アルコール中毒にならないための3つの診断方法

1)アルコール中毒とは?

(1) 中毒の意味

「中毒」とは「食中毒」などからも分かるように「急性的」・「一時的」なものを指します。生体に対して「毒を持つ物質」が許容範囲を超えて取りこまれることで起こる生体の機能障害です。中毒の治療はその原因となっている物質を体内から抜く「解毒治療」とそれによって引き起こされる「健康被害治療」の両方が必要となります。

(2) 中毒と依存症の違い

先に述べたように「中毒」とは、「一時的なもの」を指します。しかし「依存症」は問題となる「物質」や「行為」などを止めることができない、いわゆる「コントロール障害」の状態です。多くの場合、一度依存症になると「その原因となっている物質の摂取などを適量で止める」ことができなくなります。そのため依存症の場合は「原因となっている物質の摂取を止める」だけではなく、そのことで引き起こされた「健康被害」や「心の問題」を長期にわたって治療を行う必要があります。

(3) アルコール中毒の種類

アルコール中毒とは、「アルコールの多量摂取によってアルコールの持つ毒性によって引き起こされる健康障害などが発症している状態」をさします。アルコール中毒には2種類あります。

 急性アルコール中毒・・・一気飲みなどで短時間に急激な飲酒を行うことで起こり、意識を失い救急搬送されたり、最悪の場合「死」に至る場合もある危険な状態です。アルコールの持つ「急性毒性」が原因で引き起こされます。

 慢性アルコール中毒・・・長期間の大量飲酒によってアルコール性の肝機能障害・水園・アルコール認知症、などを発症するなどの健康被害を発症します。これらはアルコールの持つ「慢性毒性」によるもので引き起こされます。日本では約230万人が何らかのアルコール中毒であるといわれています。

*慢性アルコール中毒の症状*

アルコールへの渇望感、アルコールのコントロール障害、内臓疾患(肝炎・脂肪肝・肝硬変・胃炎・膵炎・心筋症、など)、対人関係のストレス、禁断症状(イライラ感・手足の震え・頭痛・不眠・妄想・幻覚・幻聴、など)

(4) アルコール依存症への改定

慢性アルコール中毒は、一時的な症状を指す言葉である「中毒」と呼ぶにはふさわしくないという観点から昭和50年代頃に、「アルコール依存症」と改定されました。WHO(世界保健機構)ではアルコール依存は、物質依存の1種で「麻薬・覚せい剤・ニコチン・カフェイン・抗不安剤・鎮静剤」などへの依存と同様の扱いで考えられています。現在アルコール中毒という言葉は「急性アルコール中毒」の場合のみで使用されています。

(5) 「アルコール中毒(アル中)」の言葉が持つ「負のイメージ」

先にも述べたように、現在では「アルコール中毒」=「アルコール依存症」であり、同じ症状の事を指します。しかしまだまだ世の中には「アルコール依存症」という言葉は浸透していおらず、アルコールで問題を抱えている人を「アルコール中毒(アル中)と表現する場合が多いようです。そしてその言葉のイメージは悪く、「だらしがない」、「社会不適合者である」などの認識不足から起こる誹謗・中傷などがアルコール依存症から立ち直ろうとしている人やそれを支える家族などを苦しめる原因になります。みんなが正しい知識を身につけることもアルコール中毒(依存症)で苦しんでいる人を救う手助けになるかもしれません。

2)アルコール中毒の診断方法

(1) 「スクリーニングテスト」での選別

自分自身の力では飲酒量をコントロールできなくなり、次第に社会生活にまで悪影響を及ぼし、人生を破たんさせてしまう「アルコール中毒(依存症)」。そうならないためにも、なるべく早い段階で治療を受けましょう。早期治療が快復への道を開いてくれます。

アルコール中毒(依存症)に限らず、治療を行う前には「検査」が行われます。その検査結果によって、今後の治療方針が決定されます。これからアルコール中毒(依存症)の検査方法を紹介します。

まず初めに「スクリーニングテスト」による選別をします。「スクリーニングテスト」とは「ふるい分ける・選別する」という意味で精神医学分野では「病気の疑いがあるか?ないか?」を判断するために用いられるテストです。これらのテストは質問項目に対し、自分が当てはまるか否かをチェックしていく方式です。アルコール中毒(依存症)の検査でよく用いられるものには、以下の3つがあります。

*飲酒パターン分類*

*CAGEテスト*

*新久里浜式アルコール症スクリーニングテスト(新KAST)*

(2) 飲酒パターンによる分類

アルコール中毒(依存症)の検査で最も基本的なものになります。飲酒パターンにより4つに分類されます。

A. 機会的飲酒・・・冠婚葬際・宴会などの「機会があれば飲む」

B. 習慣性飲酒・・・晩酌や寝酒の習慣

C. 少量分散飲酒・・・日常生活の合間に少量飲む。(仕事の合間に隠れて少しだけ飲む)これが2日以上続く。

D. 持続深銘酊飲酒・・・飲む~酔い潰れてねる~起きて飲む~寝る、の行動を2日以上繰り返す。

これらの項目でC、Dの行動パターンが当てはまった場合は「アルコール中毒(依存症)の可能性が高い」と判断されます。

(3) CAGEとは?

CAGEはアルコール中毒(依存症)検査の中で最も簡単なテストになります。次の4項目に当てはまるものが2つ以上あればアルコール中毒(依存症)の可能性が高いとされます。

 今まで飲酒量を減らさなければならないと感じたことがある。

 今まで飲酒を批判され苛立ったり・むっとしたことがある。

 今まで飲酒に対し後ろめたさや罪悪感を持ったことがある。

 今まで朝酒や迎い酒をしたことがある。

(4) 久里浜式アルコール症スクリーニング

直近の6か月を振り返ってチェックしましょう。

1. お酒が原因で人間関係にひびが入った.(はい 3.7 ・ いいえ -1.1)
2. 今日だけは飲まないと思っていたのに飲んでしまう (はい 3.2 ・ いいえ-1.1)
3. 周りの人に大酒飲みと非難されたことがある。 (はい2.3 ・ いいえ-0.8)
4. 適量で止めようと思っていても酔い潰れるまで飲んでしまう。 (はい2.2 ・ いいえ-0.7)
5. 翌朝、前夜の記憶がところどころない。 (はい2.1 ・ いいえ-0.7)
6. 休日はほぼ朝から飲む。 (はい1.7 ・ いいえ-0.4)
7. 二日酔いで欠勤したり、大事な約束を守らない。 (はい1.5 ・ いいえ-0.5)
8. 糖尿病。肝臓病・心臓病と診断された。 (はい1.2 ・ いいえ-0.2)
9. お酒が切れると震え・発汗・イライラ・不眠などの症状が現れる。 (はい0.8 ・ いいえ–0.2)
10. 仕事上の理由で飲む。 (ある0.7 ・ 時々ある0 ・ ない-0.2)
11. お酒を飲まないと寝付けないことがある。 (はい0.7 ・ いいえ -0.1)
12. ほぼ毎日清酒3合(ビールなら3本以上)晩酌する。 (はい0.6 ・ いいえ-0.1)
13. お酒の失敗で警察のお世話になったことがある。 (はい 0.5 ・ いいえ 0)
14. 酔うと怒りっぽくなる。 (はい 0.1 ・ いいえ 0)

チェックした合計が2点以上であれば「重篤な問題飲酒群」・0~2点「問題飲酒群」・-5~0点「問題飲酒予備軍」・-5点「正常飲酒群」となります。

3)アルコール中毒に「ならない・させない」ために

(1) 早めの治療を行う

アルコール中毒は一度なってしまうと完治は難しく、健康な生活を送るためには一生涯「お酒を断つ」必要があります。また重症化して来ると現れる様々なつらい症状(離脱症状などによる幻覚・幻聴・震え・発汗・嘔吐・頭痛、など・・・)に耐えられず、これらの症状から逃げるためにさらなる飲酒を繰り返してしまう場合が多くあります。このような悪循環を繰り返さないためにも、身近な人や家族に少しでも「アルコールに対して異常な行動」が見られた場合には、早めに専門医を受診することが快復への手がかりとなります。

アルコール中毒の検査や治療は「心のケア」が必要になるため、「精神科」や「神経科」を受診しましょう。最近では「アルコール依存症専門クリニック」なども増えてきています。アルコール中毒(依存症)の人に一番重要なのは、「自分がアルコールに対して問題を持っていることを認める」ことと「必ず健康になれると信じる」ことです。そのためにも身近な人たちの根気強いサポートが必要不可欠と言えます。

(2) 偏見をなくす

アルコール中毒は「病気」であり、仕事もせずに朝から飲酒ばかりしているのは単に本人が意思薄弱なだけだからではありません。「アルコール中毒」という言葉の「負のイメージ」が持つ偏見や心ない中傷が、立ち直ろうとする患者本人や支える家族の気持ちまでも折ってしまう場合があります。
もしも身近にアルコール中毒で苦しんでいる人がいるのであれば、自分でできる範囲で「この病気を正しく理解し・少しでもサポートしてあげる」ことが何よりも大切なのではないでしょうか?






今回のまとめ

1)アルコール中毒とは?

2)アルコール中毒の診断方法

3)アルコール中毒に「ならない・させない」ために