授乳 アルコール長かった妊娠期間を経て無事に出産したら「喜びの乾杯!」と行きたいところですが、授乳中のママがアルコールを摂取する場合どのような点に気をつけなければならないのでしょう。そこで今回は授乳期のアルコールについて詳しく解説します。



授乳期のアルコールはいつから大丈夫?飲む時の9つの注意点

1)授乳期の飲酒がいけない理由

(1)母乳中のアルコールが赤ちゃんに移行してしまう

赤ちゃんの重要な栄養源である「母乳」ですが、その原料はママの「血液」なんです。血液が乳腺を通過する際に赤血球が取り除かれて、白色の母乳となります。そのため「良い母乳を作るには良い血液」が欠かせないのです。そのため、ママが飲酒をすると血液中のアルコール濃度がそのまま母乳に含まれることになってしまいます。

一般には「母乳中のアルコール濃度は母体血中濃度の90~95%」といわれ、「飲酒量の平均2.0%が乳児に移行する」といわれています。乳児の体の機能は未熟でアルコールを上手に分解することができないため、ママが大量に飲酒してしまうと急性アルコール中毒などの危険性が出てきます。

(2)赤ちゃんの神経や器官に悪影響を及ぼす

授乳期のママがアルコールを摂取した場合、血中アルコール濃度と同等の「アルコール入り母乳」を赤ちゃんが飲んでしまうことになります。アルコールは肝臓で分解され「アセトアルデヒド」という有害物質が生成されます。赤ちゃんを始め子供は肝機能や腎機能が未熟であるためアルコールの分解能力が弱く、アルコールを摂取してしまうと脳の神経細胞や体のあらゆる器官に悪影響を及ぼしてしまいます。

(3)赤ちゃんの成長に悪影響

特に深刻なのが「急性アルコール中毒」です。重症の場合痙攣や昏睡を引き起こし、昏睡状態が12時間以上続くと何らかの後遺症が残るといわれています。母乳が原因で急性アルコール中毒になった事例はそう多くありませんが、中にはボトル1本のワインを飲んだ母親が授乳して生後数日の赤ちゃんに急性アルコール中毒の症状が出た例もあるので注意が必要です。

それ以外にも「酩酊状態」になったり、脳が過剰に刺激されることで「睡眠時間が短くなったり」などの影響があります。また長期間アルコールを含んだ母乳を与えていると「赤ちゃんの発育が遅れたり」、「肥満」を引き起こす原因になるといわれています。

(4)良質な母乳が作れなくなる

授乳期のママの体内では様々なホルモンが分泌されています。なかでも重要なのは母乳を作りだす「プロラクチン」と母乳を押しだす働きをする「オキシトシン」の2つになります。しかしこれらのホルモンは飲酒によって阻害されてしまうため、母乳の出が悪くなったり、赤ちゃんがおっぱいを吸っても母乳が出にくくなってしまいます。

飲酒によって母乳の「質」&「量」ともに低下することで、良質な母乳を飲めなくなり赤ちゃんの成長・発達にも悪影響を及ぼしてしまいます。

2)授乳期のアルコール摂取の注意点!

(1)飲酒後どのくらい時間をあければ大丈夫?

飲酒後「このくらい時間がたてば大丈夫!」という安全基準はいまだはっきり分かっていません。「3~4時間あければ授乳しても影響がない」という話をよく聞きますが、これも実証されているわけではありません。ではなぜ「3~4時間」という時間が出てきたのでしょうか?

血中アルコールの消失速度の実験によると、女性の場合「一時間で平均約6.5gのアルコールが消失する」ことが分かりました。これは「ビール中瓶一本が分解されるのに約3時間」必要な計算になり、この結果から「飲酒後3~4時間あける」というのは一つの目安になることが分かります。もちろん飲酒した量が多ければ、アルコールを分解する時間はさらに必要になります。

アメリカの母乳育児とアルコール摂取に関する研究では、「飲酒後の授乳は最低2時間は避ける」、「母親がアルコールの影響を感じなくなるまで授乳しない」などとされています。加えて「大量の飲酒や継続的な飲酒をした場合も授乳は控えるべき」としています。

しかしながら、これらの実験では「高濃度のアルコールを含んだ母乳を飲み続けた赤ちゃんにどのような影響が出るのか?」、「飲酒後授乳まで何時間あけたらよいのか?」、「どのくらいの飲酒なら問題がないのか?」などの具体的な事は分かりません。実際に赤ちゃんでこのようなリスクを伴う実験をすることは不可能だからです。

(2)体質や体重によっても変わるアルコール分解能力

「アルコールの消失時間はあくまでも目安」であり、アルコールを分解する能力については肝臓の大きさや遺伝的要素、体格などでも大きな個人差があります。また、飲酒した量や体調によっても大きく左右されます。授乳期に飲酒をする場合は自分の体質や体調を十分に考慮し、飲むタイミングを測りましょう。

ちなみに血中アルコール濃度のピークは飲酒後30~2時間といわれているので、この時間帯の授乳は絶対に避けましょう。また基本的に3時間おきの授乳をしているうちは飲酒は控えた方が良いようです。

(3)ポイントは「アルコール量」と「ママの体重」

赤ちゃんに悪影響が出ない飲酒量はどのくらいなのでしょうか?そこでポイントになるのが「アルコール量」と「ママの体重」です!

*体重が50kgのママの場合*

✔アルコールの許容量は「ママの体重1kgに対し0.5g未満/日」です。

そのため「50×0.5=25g」となり、「1日25g未満のアルコール量が許容範囲」となります。しかしアルコール量が25gといわれてもピンときませんよね?純アルコール量は「飲酒量」に「アルコール度数」と「アルコールの比重」を考慮して計算します。

*アルコール量の計算*

酒の量(ml)×度数(%)/100×比重(0.8)=純アルコール量(g)
つまり50kgにママの許容範囲は

✔アルコール度数5%のビールなら約625ml=500ml缶ビール1本程度
✔アルコール度数14%のワインなら約220ml=ワイン小瓶1本程度

となります。しかし何度も言いますが、アルコール処理能力には個人差が大きく許容範囲だからと言って毎日飲むのは避けましょう。母乳にアルコールが移行して可愛い赤ちゃんに影響が出てから後悔しても元には戻れません!飲酒はたまに、気分転換程度に楽しみましょう。

3)ノンアルコール飲料にも要注意!

(1)ノンアルコール飲料にもアルコール?

ノンアルコール飲料(清涼飲料水)は「アルコール度数 1%未満」、お酒は「アルコール度数1%以上」が清涼飲料水とお酒を区別する定義となります。そのためノンルコール飲料でも微量のアルコールを含むものがあります。赤ちゃんへの影響を気にして選ぶのであれば、「アルコール 0.00%」と記載されているものをおすすめします。

これはアルコール0%の表示よりも100倍の精度でアルコールを含んでいないため母乳への影響の心配がありません。しかし注意したいのが「添加物」と「糖分」です。ノンアルコール飲料の中にはアルコールの代わりに「カラメル色素や香料、酸味料」などの添加物を多く含んでいるものや「糖質」が高いものがあります。これらを多く取り過ぎるとむくみや乳腺炎の原因となってしまうので気を付けましょう!

(2)気分転換に上手に利用

妊娠中からずっとアルコールを控えていた人は、出産のお祝いや育児のストレス解消に「大好きなお酒を飲みたい!」と思うかもしれません。慣れない育児に禁酒のストレス。ママがイライラしていたら赤ちゃんだって安心できませんよね。そんな時は上手にノンアルコール飲料を利用したり、授乳時間が空いてきたら気分転換に少しだけ飲んだり、ストレスを減らして育児を楽しみたいですね。

授乳中のママがアルコールを摂取することで、赤ちゃんに悪影響が出る危険性があります。しかしある程度授乳間隔があいてきたら、「飲酒するタイミングや自分の体質や体調を把握」した上で少量を気分転換程度に飲むことはそれほど問題はないようです。しかしながらその安全性は確立されたものではないため、万が一赤ちゃんに悪影響が出た時のことを考えるのであれば「妊娠・授乳期は禁酒」したほうが安心かもしれません。



今回のまとめ

1)授乳期の飲酒がいけない理由

2)授乳期のアルコール摂取の注意点!

3)ノンアルコール飲料にも要注意!