アルコール依存症 離脱症状アルコール依存症になってしまった人がアルコールを断つ時に現れる「離脱症状」。「離脱症状」の恐ろしさを知り、アルコール依存症になる前に飲酒を上手にコントロールできる強い意志を持ちたいですね。それでは「離脱症状」について紹介します。






気を付けよう!アルコール依存症の16の離脱症状

1)離脱症状とは?

(1)早期離脱症状群

離脱症状には2種類に分類され、早期離脱症状群の症状にはアルコールを断ってから数時間で現れる「手の震え」などが挙げられます。しかしこれらの症状には個人差が大きく「他人が見ても分かるくらいの大きな震え」や「本人にしか分からないような小さなもの」、「字を書いた時にうまく書けない」など様々です。中には手が震えて小さなおちょこだとうまく持てないので、大きなコップに変えてしまう人もいるようです。

手の震え以外にも、大量の発汗・眠れない・吐き気など主に身体機能が乱れてしまっている状態になることを指します。これらの原因は、大脳の神経を抑制する働きをアルコールによって緩みます。このため飲酒によって高揚感や解放感が得られるのですが、脳や身体に取っては本来の機能をアルコールによって無理やり狂わされている状態になります。

その状態が長期間続くと身体や脳がバランスを取ろうと狂った状態に合わせるようになります。そこで急激にアルコールが切れてしまうと、「身体の調整うまくが取れなくなり自律神経や脳の機能に障害」が現れ始めます。アルコール依存症者の「最も激しい飲酒欲求や苦しみは早期離脱症状群が現れる前兆を感じた時」だといわれています。

(2)後期離脱症状群

主に毛の働きの乱れによる症状を指します。後期離脱症状群は断酒後2~3日で現れ、特徴的なのが「幻聴」と「幻覚」です。アルコール依存症では、「虫や小動物が群れでチラチラ見える」ことが多いといわれています。中には、「人が壁から出てきた」とか「人がいて話しかけられた」などリアルな体験をする人もいます。それほどアルコールの脳に与える影響は強いと言えます。

これらの症状は「振戦せん妄」と呼ばれ、すべての人に起こるわけではなく「身体へのダメージが大きい」、「栄養状態が悪い」、「飲酒がハード」だった場合に多くみられる傾向があります。これらの恐怖心から逃れるためにさらに飲酒してしまうケースが多いようです。この他に注意が必要な症状は「てんかん様けいれん発作」です。離脱期に1~3回ある程度ですが、意識を失うこともある大発作なので転倒してけがをしたり事故に合わないように十分注意しましょう。

2)主な症状や期間

(1)主な症状

アルコール依存症になると、アルコールが切れた時に様々な不調が身体に起こります。これらの症状を「離脱症状」と呼びます。以下に挙げる症状がすべて当てはまらなくても、複数当てはまればアルコール依存症の可能性があります。離脱症状は断酒を続けることでしばらくすると収まってきますが、飲酒を重ねることでも一時的に症状を抑えることができます。しかしこれは新たな離脱症状を誘発してしまうため「悪循環」を招く原因になります。

*主な症状*

手の震え・全身の震え・発汗(特に寝汗)・イライラ感・集中力の低下・不眠・悪夢を見る・吐き気やおう吐・血圧上昇・不整脈・指先のこわばり・けいれん発作(アルコールてんかん)・幻聴・幻覚(振戦せん妄)

またアルコールが抜けてからしばらくの間は脳が正常に機能しないため日付や時間が分からなくなったり、物忘れ、字や計算がうまく書けなかったりできなかったりすることがあります。これらの症状はアルコールを切ってからもしばらくは続きます。しかしながら上記のような症状も含め、これらの症状は離脱期に現れすぐに消えてしまうのが普通です。まれに数カ月程度残ってしまっても、徐々に快復してくるので心配ありません。

(2) 離脱症状はどのくらい続くのか?

離脱症状は断酒後、数時間で現れ症状がある期間は断酒をしていれば自然に収まっていきます。けいれん発作は飲酒を病めてから8時間以内に起こり、発作が起こるのは離脱期内に1~3回程度です。この際、抗けいれん剤などは必要ありません。幻聴・幻覚などは断酒後2日目位から現れ3日程度で治まります。離脱症状による高血圧も1週間もすれば正常値に戻るので心配ありません。不眠やイライラ感に対して一時的に睡眠薬や抗不安薬を使用することがありますが、離脱期が過ぎたら必要ありません。

(3)離脱症状が意味すること

「離脱症状が現れる=身体的依存の完成」といえます。アルコール依存症のコントロール障害の原因には「精神的依存」と「身体的依存」が挙げられます。離脱症状が現れたのであれば、すでに身体的依存は完成しているのでアルコール依存症の可能性が高いと言えます。またアルコール依存症患者のすべてに離脱症状が起きるわけではないため、離脱症状がないからと言って「自分はアルコール依存症ではない」と過信してしまうことのないよう注意しましょう。

3)治療法

(1)入院治療

離脱症状はアルコールを完全に断つ必要があるため、通院ではなく入院治療が主流になります。病院でアルコールが絶対に手に入らない状態に身を置き、医師の指導のもとでアルコールを断ちます。

(2)治療のステップ

初めに「アルコールの解毒治療」を行います。「心と体に起きている問題」や「離脱症状」の治療を進めていきます。次に「心のリハビリと断酒」を行います。本人が飲酒問題を現実のものとして認識し、断酒への決意を持てるように進めていきます。最後は「退院後のケア」です。退院してからも断酒が続けられるように、自助グループへの参加や通院、抗酒薬の服用などを行います。

入院治療は段階を踏んで進められ「離脱症状が完全に消え、アルコールに手を出さない」と医師が判断するまで入院生活は続けられ、退院後もアルコール依存症は完治が難しいため、ずっと通院が必要になります。

(3)本人の強い意志

アルコール依存症の人に共通する心理特性は「否認」と「自己中心性」が挙げられます。アルコール依存症であることを認めようとせず、飲酒について嘘をついたり、屁理屈や揚げ足取りなどでごまかし、飲酒を責められると反発したりふてくされるようになります。またアルコール依存症の人は物事を自分の良いようにしか捉えなくなり、都合が悪いことは周りのせいにする傾向があります。

治療には本人の強い意志が必要不可欠なのですが、この「否認」と「自己中心性」が大きな障害になることが多く、無理やり通院させても効果は期待できません。アルコール依存症の問題を現実として受け止めて、認め、強い意志を持って治療に取り組むことが快復の第一歩となります。

アルコール依存症は1度発症してしまうと、一生苦しみ続けなければならない病気です。そうなる前に離脱症状の恐ろしさを知り、自分の意思でアルコールを止めることが重要なポイントになります。万が一なってしまっても、早期発見であれば完治する可能性があるのでためらわず病院へ行くことをおすすめします。






今回のまとめ

1)離脱症状には「身体機能の異常による早期離脱症状」と「脳の異常である後期離脱症状」がある。

2)手の震え・幻覚・幻聴・けいれん発作など、様々な症状が起きる。

3)完全にアルコールを断つことで離脱症状は消える。

4)治療には入院が必要である。

5)本人の「アルコール依存症」であるという「自覚」が治療のカギになる。

6)早期発見であれば完治する可能性があるので早めに受診をする。

7)重症化してからでは一生完治できない病気である。