急性アルコール中毒 治療法仕事の繁忙期が終わって、仲間で飲み会。楽しく飲んでいると、まったく反応しない仲間が1人。そんな時疑うのが「急性アルコール中毒」です。今回は急性アルコール中毒と治療法についてご紹介します。






もしあなたが急性アルコール中毒になったら!6つの治療法

1) 急性アルコール中毒はどうして起こるの?

まずは急性アルコール中毒が起こる仕組みについて理解しておきましょう。「私は大丈夫」という油断は禁物ですよ。

(1)急性アルコール中毒の定義

急性アルコール中毒とは「短時間に多量のアルコールを摂取することによる中毒症状」のことを言います。短時間とは「一時間」のこと、多量とは「日本酒一升」や「ビール5000ml」のことを言います。この程度のペースの飲酒が見られた場合、急性アルコール中毒と診断されるのです。

(2)急性アルコール中毒が起こる仕組み

お酒に含まれるエタノールは、血流に乗って脳に届き、脳の働きを鈍くします。最初は理性的な考えや感情の制御の働きが鈍くなるだけなので、活発的になる程度にとどまります。この段階では、お酒を飲んだ本人もお酒のペースを控えたり、水を飲んだりして自分で対処できます。

しかしこの段階を超えると、エタノールは脳幹部にまで到達し心臓の働きを弱めます。そして最終的には生命維持の要となる中枢神経までもマヒさせてしまい、生命維持に必要な呼吸や心拍が弱まり、最悪の場合死に至るのです。

(3)お酒に強い人は大丈夫?

確かに、飲んでも飲んでも酔わない人はいますね。アルコールを分解する酵素を体内にたくさん持っている人です。でも、お酒に対する強さ弱さは、急性アルコール中毒とはあまり関係ありません。なぜなら、急性アルコール中毒が起こる引き金となるのは、分解酵素の数ではなく血中のエタノール濃度だからです。お酒に強い人でも、血中のエタノール濃度が一定数を超えれば中毒症状を表します。

ちなみに「昏睡期」と呼ばれる急性アルコール中毒の最終段階では、血中のアルコール濃度は0.4パーセントにまで上るのです。楽しく飲んでいる「ほろ酔い期」は0.08パーセント。楽しむ程度に飲んでいる人の5倍の数値となります。

2)急性アルコール中毒の人を見つけたら?

急性アルコール中毒の人を放っておいたら死んでしまいます。でも以下の処置をしてあげれば、その命は守られます。

(1)何はともあれ救急車を呼ぶ

昏睡状態の人を見かけたら迷わず救急車の要請です。お酒で救急車なんて情けない。そんな一時の恥、命に代えられません。真っ先に救急車を呼びましょう。このとき「誰か救急車を呼んで!」ではなく相手を指さして、もしくは名指しで「○○さん、救急車を呼んで!」というのが一番素早く救急車を呼ぶ方法です。

(2)まだ意識があるのなら

意識があったり、声をかければ目を覚ますようなら、しっかりしている人が必ずそばにいましょう。「まだ大丈夫」と思って放っているうちに、エタノールが脳内を駆け巡りいつの間にか呼吸が止まったり、心拍が弱まったりしてしまうのです。そうした異常に気付けるように、誰かが一緒にいてあげましょう。もちろん、呼吸や心拍の異常が見られたら、迷わず救急車を呼びましょう。

(3)横に寝かせて温める

経験のある方もいるかもしれませんが、お酒を飲むと血圧が上がり寒くなる人もいます。体が冷えるのを防ぐため、布団や毛布を掛けてあげましょう。ない場合は、周りの人の上着を借りるのも一つの手です。また、先に述べたように急性アルコール中毒の人は呼吸が弱まってくる可能性もあります。ベルトやボタンなどの衣服を緩め、呼吸しやすい姿勢を取らせましょう。

(4)吐しゃ物に注意

酔った人が吐いてしまったというのはだれでも一度は聞くエピソードです。「気持ち悪いな」と自覚できている人が吐いてしまったのなら、それは後日の笑い話にもなりますが、急性アルコール中毒に陥った人は、この吐しゃ物が原因で命を落とすこともあります。意識が薄れているため、胃の中から食べ物が戻ってきてしまっても、口から出すことが出来ず、そのまま気管へ流れ込んでしまって窒息してしまうことがあるからです。この時には回復体位という体制をとらせましょう。

体の左を下にして横向きにし、右足を前に出して体を安定させます。そして、右手の甲をあごの下に持ってきます。左手は前方へ伸ばしておきましょう。こうすれば、もし吐いてしまっても口から出すことが出来て、吐しゃ物による窒息を防ぐことが出来ます。口から出た吐しゃ物はふき取ってあげましょう。

3)病院に運ばれたら

病院までくれば適切な処置をしてもらえます。が、「大人として情けない」なんて、お医者さんから怒られてしまうかもしれませんね。

(1)なにはともあれアルコールの排出

病人に搬送された後は、血液検査で血中アルコール濃度の検査をし、正式に急性アルコール中毒だと診断されます。本人にとっては苦しい時間が続きますが、アルコールを体内から消し去る方法は、排出をひたすら待つしかありません。重度の場合には、排出を早めるために点滴を打ってくれます。

(2)胃洗浄は苦しい

これは急性アルコール中毒の場合だけではありませんが、「胃洗浄」という処置がなされることがあります。これは大変苦しい処置です。胃の中に大量に水を入れられ、それを無理矢理吐き出すという作業を繰り返します。胃腸炎にかかったとき、はいても吐いても吐き気が止まらずえずき続けるという経験がある人もいるでしょう。それを人工的に行い、胃の中に入った異物を徹底的に取り除きます。

アルコールのせいで判断力が落ち、食べてはならないもの(ときどき煙草を食べてしまう人も)を食べてしまい、アルコール以外の中毒症状が疑われるときにこの処置が行われます

4)お酒は楽しく飲むために

苦労をねぎらうはずの場で、体を壊すのは本末転倒です。大人であれば、落ち着いてお酒を飲みましょう。間違っても一気飲みなどしてはいけませんし、お酒の苦手な人に強要してもいけません。また、日本にはソフトドリンクを注文すると「情けない」とはやし立てる人もいますが、遠慮は無用です。自分の健康のために堂々と水分を取りましょう。

急性アルコール中毒の人がでると、周りの人が急に冷静になります。処置をしてくれた周りの人たちも、本当は楽しい時間をすごすためにお酒の場に集まったはずです。自分ひとりの粗相で、ほかの人たちの楽しみをふいにしてしまった、なんていうことにならないように、正しい飲み方を身につけたいものですね。






今回のまとめ

1)急性アルコール中毒はどうして起こるの?

2)急性アルコール中毒の人を見つけたら?

3)病院に運ばれたら

4)お酒を楽しく飲むために